アパートローンを徹底解説!住宅ローンとの違いや金利・審査について
不動産を賃貸用として購入を検討している場合、自己資金では賄うことが難しいので一般的に融資を検討するでしょう。
事業用として不動産を購入しようと考えているのであれば、「アパートローン」について覚えておく必要があります。不動産経営を目的とした融資に対応しているので、事業計画も審査基準の1つですし、賃貸収入を考えている方にとってはメリットもあります。
そこで今回は、アパートローンの基本から住宅ローンとの違い、そしてアパートローンの金利や審査基準などについて説明していきます。
事業性を重視したアパートローンについて興味がある方は、今回の記事を参考に検討してみてください。
アパートローンは賃貸収入を返済に充てる融資
まずは、アパートローンの基本的な仕組みや目的と、メリット・デメリットについて説明していきます。アパートローンは、事業という点を重視しているので、これから不動産経営を検討している方にとっては特に必要となるでしょう。
アパートローンは賃貸収入を返済に充てる、賃貸用不動産の長期融資のこと。賃貸用住宅の購入資金や建築・リフォーム資金を目的とした融資が必要な方向けのローンです。
アパートローンの融資目的は賃貸用の不動産に充てること。
事業性や賃貸収入を審査基準にしているので、事業計画の作成がポイントとなります。融資額については、事業計画の信頼性や実現性、金融機関の判断によって異なるでしょう。
アパートローンのメリット・デメリット
続いてアパートローンのメリット・デメリットについて説明していきます。
アパートローンのメリットは、次の内容を挙げることができます。
- 個人の年収よりも事業性重視
- 賃貸収入が返済金のため融資を受けやすい
- 初めて賃貸経営をする方でも融資を受ける事ができる
最も特徴的でありメリットでもあるのが、事業性を重視している点です。
賃貸事業を融資の審査基準としているので、利用者の年収や返済能力といった点だけでなく、事業計画を判断基準として不動産の資産価値、事業の安定性や収益性を融資条件として当てはめています。
従って、個人の年収や信用力による審査基準のハードルが下がっているといえます。また、事業計画の実現性や事業内容を融資担当者に納得させることがポイントです。
一方でアパートローンのデメリットについては次の通り。
- 金利は住宅ローンよりも高くなる可能性がある
- 借入期間は築年数によって短くなる
1つ目の金利についてですがアパートローンの場合、各金融機関によって金利設定が異なるため、場合によっては5%台の金利となる可能性があります。従って、一概にデメリットともいえませんが、住宅ローンといった他のローンと比較すると金利が高くなる傾向があるということです。
2つ目の借入期間は、新築で35年の長期借入が適用される事例もあります。しかし、築年数が数10年経過していると、借入期間20年と短縮される可能性があるので覚えておきましょう。
アパートローンと住宅ローンは融資目的が違う
ここからは、アパートローンと住宅ローンを違いや、プロパーローンとの違いについて説明していきます。
アパートローンと住宅ローンは目的が違うが併用可能
アパートローンと住宅ローンの融資目的や内容を、分かりやすく表でまとめました。
アパートローンの場合 | 住宅ローンの場合 | |
---|---|---|
利用条件 | 満20歳以上、継続した収入及び前年度年収200万円以上(税込み) | 給与所得者、又は3年以上継続している自営業者 |
利用目的 | 賃貸収入用の不動産を購入等する為の資金確保 | 居住用不動産の資金確保 |
返済原資(返済に充てる資金) | 賃貸収入 | 借り入れた人の年収 |
審査基準 | 不動産事業の安定性や収益性を中心とする | 年収や職業、過去の融資実績など個人の信用力 |
借入期間 | 最長で35年間 | 最長で35年間 |
連帯保証人の有無 | 連帯保証人は必要 | 団信保険に入ると連帯保証人は不要 |
上に記載した項目が、融資に必要な項目でありアパートローンと住宅ローンの主な違いでもあります。特にポイントとなるのは、事業用か住居用かという違いです。
アパートローンは、借り入れた人が住居用として利用するのではなく、賃貸収入を得る為の融資です。
対して住宅ローンは、住居用の融資のみを認めているサービスですので、アパートの購入には住宅ローンが利用できません。
なぜなら、アパートは借入人やその家族だけでなく、外部から部屋を借りる事があるため、収益物件として分類されているからです。ただし、住宅ローンを組んでいる場合でも、後から収益用物件を購入する際にアパートローンとの併用は可能です。
しかし、アパートローンは一般的に住宅ローンよりも金利が高めであることや、土地を含めた融資を認める例が少ないので、予め資金・事業計画をしっかり立てる事が大切です。
アパートローンとプロパーローンの違いは事業という点
不動産の融資には、プロパーローンというサービスがあります。プロパーローンは、事業者が事業の運転資金や設備投資資金、又は事業用不動産の購入資金に充てる為の融資となります。
アパートローンとの違いは、事業用の融資という点です。アパートローンは、収益用物件の融資という点で、事業寄りではありますが個人で融資を受ける方向けです。
対して、プロパーローンは不動産に限らず、事業資金を捻出する為に利用するサービスであり、その1つとして事業用物件の購入資金への融資も可能とされています。従って事業の運転資金か、個人が資産構築をする為の資金確保という大きな違いがあります。
アパートローンの金利は金融機関によって設定が異なる
アパートローンの収支バランスを決める、重要な要素といえば金利設定です。
そしてアパートローンの金利については、各金融機関によって利率が異なっており次のように幅広く設定されています。
- メガバンクは1%以上
- 地方銀行は1%後半~2%後半
- 信用金庫や日本政策金融公庫は3%台
- ノンバンク(信販会社やクレジット会社など)は4%以上
またメガバンクのようにアパートローンの金利を低く設定している金融機関は、融資の審査基準が厳しいので、事業計画の作成・相談をプロのコンサルタントに依頼するのも良いでしょう。
しかし、借り手自身が事業計画について、直接説明できる程に理解している必要があります。
今回紹介しているアパートローンの金利は、あくまで目安ですので実際には金融機関ごとに金利設定は違いますし、審査基準も独自の項目が設けられている場合があります。
アパートローンの金利は3種類に分けられている
アパートローンの金利の種類については3種類に分けられています。
- 連動金利方式
- 固定金利選択方式
- 全期間固定金利方式
連動金利方式とは、短期プライムレートと連動しながらアパートローンの金利も変動します。短期プライムレートとは、銀行が貸出先の企業へ融資を行う際に、最も優遇した金利設定のことです。通常の金利設定は、プライムレートに1%程上乗せされた設定なので金利を抑えられます。
固定金利選択方式とは、固定金利の期間が2年・3年と選択可能で、固定金利適用期間が終了すると、固定金利か変動金利が更に選択することができます。
しかし、変動金利を選択した場合は、以後固定金利を選択することができませんので注意が必要です。
全期間固定金利方式は、借り入れた時点での金利で固定された状態で、金利の変動がないタイプです。従って、債券市場の変動による金利上昇の影響を受けないため、返済計画の見通しが立ちやすい特徴があります。
一見するとどれも同じように感じますが、返済期間は長期となるため金利が1%違うだけで、返済額が800万円以上の差が発生するケースもあります。
従って、金利はなるべく低い金融機関を選ぶのがおすすめです。
アパートローンの金利を低くするためには、審査基準は厳しいですが金利1%から設定されている、メガバンクへ融資の相談をしてみる方法がいいでしょう。
また、返済方法についても考える必要があります。
アパートローンの返済には、元金均等返済と元利均等返済から選ぶことができ、前者の場合を選ぶと、借り入れ当初は金利が高く設定されていますが、徐々に金利が下がります。従って、総返済金額を抑える事ができます。
ただし、借り入れ当初の金利は高めに設定されているので、返済額を重視したい方は元利均等返済を選ぶのがいいでしょう。
元利均等返済は、毎月の返済額が一定である代わりに、元金と金利を常に調整しています。従って、返済計画は安定しやすいですが、総返済金額は元金均等返済よりも高めになります。
アパートローンの金利を低くするには、金融機関ごとの金利設定を比較・検討する事と、金利・返済方式の選び方がポイントとなります。
アパートローンの審査基準は事業性や信用力を重視
アパートローンを受ける為には、審査を通過する必要があります。そして、審査基準については、住宅ローンと違い事業性が重視されています。
つまり、個人の年収や返済能力・過去の融資実績だけではなく、収支性や事業の安定性、実現性や購入予定の物件の資産価値などを判断基準としています。
審査基準を具体的に分けますと主に3つになります。
- 借り手の返済能力
- 物件の資産価値
- 物件の収益力
上から順番に説明していきます。
1、借り手の返済能力とは
安定した収入や前年度の年収が200万円以上か、資産がどれだけあるのかといった事を審査されます。アパートローンの融資を行う金融機関にとってのリスクは、借り手の不動産に何らかの問題が起こり損失発生することです。
また、そうした問題が起きた際に、アパートローンの返済が滞らない程の収入があるかを審査されています。
2、物件の資産価値とは
物件の資産価値は借り手が購入する賃貸用物件の価値を指します。アパートローンの場合は、建物を担保価値となるので資産価値が事業計画通りの水準か審査されます。
従って、事業計画で建物の価値について説明しても、実際に審査された際に資産価値や担保価値が低いと判断されると融資が難しいです。
3、物件の収益力とは
借り手が購入予定としている物件の賃貸収入と、毎月の維持管理といった経費を差し引いた収益がどの程度か判断する項目です。アパートローンの場合は、賃貸収入を返済に充てる規則なので、収益力がなければ返済が難しいと判断されてしまいます。
事業計画の収益計算は現実性を持たせることが大切ですし、収益力のある物件を探す所からアパートローンの審査基準のハードルが決まります。
アパートローンの審査期間については、取引実績や事業計画・返済能力の条件が整っていると判断されると、1週間程度で審査に通過することができます。
また、それ以外の場合は1ヶ月以上の期間、審査待ちとなることがあるので、融資を受ける際は早めに準備しておきましょう。
アパートローンは相続税や問題点など気を付ける点も多い
アパートローンの特徴は、賃貸収入用不動産融資という点だけではなく、相続税対策としても活用することができます。
相続の対象となりますし、法定相続人であれば相続することとなります。また、アパートローンを組んだ不動産の相続を放棄する事は可能ですが、その場合不動産を含め相続予定の財産全てを放棄することになります。
ちなみに、相続放棄の手続きは、相続の開始があったことを知った3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。
通常、相続税が掛かる財産とは、預金や現金、土地・建物などで、現金や預金については通貨の価値が定まっているので、相続税対策はできません。
また、土地や建物の相続税については路線価から価値を算出する方法、もしくは路線価による算出ができない場合、固定資産税評価額から計算する方法で価値を算出します。
路線価とは土地の時価を計算する手間を省くために生まれた方法です。そして、路線価評価方式とは、道路に価値を定めた上で、土地が道路にどれだけ接地しているかによって価値を算出します。
計算式は次の通りです。
しかし、路線価方式と固定資産税方式でも、相続税対策はできないので土地評価分だけそのまま相続税が課税されます。
そこでアパートローンによる相続税対策を活用します。なぜ、アパートローンを組むことによって、相続税対策になるかいいますと、次の方法を行う事により、評価額や税額を下げる事が可能となるからです。
- アパートローンの物件を他人に貸す
- アパートローンを建築費用に回す
1つ目は、アパートローンを組んだ物件を他人に貸すことで、借地借家法によって土地評価額が減額します。また、他人に貸し出すことで借家権割合が適用され、相続税を計算する際に一律で30%の減額となります。
2つ目は、建物の評価額は固定資産税評価額という計算で算出されます。固定資産税評価額は、購入・建築費用の7割程度の相場なので、アパートローンで借り入れた金額よりも低い評価額となり相続税も抑える事ができます。
このように、アパートローンを活用した相続税対策ができることも魅力的です。
アパートローンの相続税対策のメリット・デメリット
続いて、メリットについてですが、相続税対策になるという点でしょう。
例えば、現金で2億円を保有した状態で、3人の法定相続人に相続した場合の相続税は、1120万円かかる計算となります。そして2億円で土地を購入し、アパートローン6000万円で建物を建てた場合、最終的に560万円の相続税となります。
つまりアパートローンを活用して評価額を下げると、場合によっては約2分の1の金額まで、相続税対策が可能となり大きな効果を期待できます。
対してデメリットは、アパートローンが組まれた物件を相続する際に、引き継ぎで問題が発生する場合があることです。
相続では、債務=借入についても相続するのですが、銀行側の判断によって引き継ぎに関する作業を認めないケースがあります。例えば、被相続人がアパートローンを活用して3棟のアパートを保有していたとします。
そして、法定相続人は3人とします。
それぞれの物件を1棟ずつ相続した際に、2棟のアパートは収益力があり、順調に返済が進んでいましたが、1棟は空室が目立ち賃貸収入が確保できないことが発覚します。
つまり、2棟の収益力でカバーしている状態だったのです。
この場合、赤字となっているアパートを相続した方は、銀行側から返済能力や収益力について問題視されるので引き継ぎが滞るデメリットがあります。
アパートローンを選ぶ際は比較・検討することが大切
アパートローンを利用する場合は、金融庁による監視強化の件やアパートローンの問題についても知っておく必要があります。
金融庁としては建設・融資バブルに近い状態を、食い止めようとしているのでしょう。
また収益性に問題といえる物件でも、容易にアパートローンの審査を通過させる地方銀行の動きがあるため、監視を強化しています。
従って、これからアパートローンによる不動産購入を考えている方は、返済原資でもある賃貸収入が長期的に見込める物件を探す力が必要であり、コンサルタントなどに相談してみることがリスク回避に繋がります。
アパートローンで気を付けるべきことは、赤字経営による返済が難しい状況に陥らないようにすることです。
アパートローンは計画的に!融資について考えてみよう
また、地方銀行による過剰な融資は、借り手にとって損失を招く原因でもあるので、冷静にアパートローンの利用を考える必要があります。最近では、金融庁による銀行の監視が強化されているので、徐々に健全化されていく可能性はありますが、借り手側の見極めも大切です。
アパートローンによる融資を受ける際は、その先に収益を得られる事業計画を作成するだけでなく、プロのコンサルタントに相談してから決めてみるのもいいでしょう。