老後は年金だけで大丈夫?知っておきたい遺族年金と自分の年金の関係
近年は平均寿命が延びてきているものの、ご夫婦そろって老後の年金生活を迎えられる方ばかりではありません。
特に、若くして配偶者に先立たれ遺族年金をもらっているという方。
自分が65歳を迎えて老後の年金をもらうようになると、今受け取っている遺族年金はどうなるのかと心配ではありませんか?
答えを先に述べてしまうと、「自分の年金がいくらもらえるのか?」によって変わってきます。具体的には、自分の年金額との調整が入った上で遺族年金のもらえる額が変わるということ。
つまり、単純に遺族年金と自分の年金を満額もらえるというわけではないのです。
そのため、老後は夫婦2人そろって年金を受け取る想定で老後生活を考えていた場合、配偶者に万が一のことが起きたとしたら老後の生活資金が足りなくなる恐れも・・・。
そこで今回は、遺族年金と自分の老齢年金の関係についてわかりやすく解説していきたいと思います。
遺族年金は誰がもらえるの?老後にもらえる老齢年金との違いを解説
そもそも、ひとくちで「年金」といっても遺族年金と老齢年金とでは役割が異なっています。
ということで、まずは遺族年金と老齢年金の違いについてみてみましょう。
遺族年金 | 残された家族(遺族)のための年金 |
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老齢年金 | 自分が老後に生活していくための年金 |
遺族年金は残された家族のためのもの。このことから、遺族年金がないと生計を維持するのに困ってしまうような方から優先して受給できるような仕組みになっています。
そのため、例え受給要件を満たしていても収入が多い方だと支給停止となる場合もあるので注意が必要です。
遺族年金については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
対して自分のための年金となる老齢年金。老齢年金は基本的に65歳になれば受給できるようになります。
遺族年金と自分の年金両方もらえるor選ぶ?併給調整を知っておこう
遺族年金と老齢年金はそもそもの目的が異なってはいるものの、それでももし「遺族年金」「老齢年金」の両方をもらえたとしたら経済的な安心感は大きいですよね!
ただ、年金には「併給調整」という制度が存在します。例えば複数の年金受給権が発生した場合に両方もらえるケースもあれば、逆に調整が入ってもらえなかったり…ということも。
つまり年金の併給調整が入ると、併せて受給できる場合もある一方で、いずれか一方の年金を選択しなければならないことがあるのです。
例えば、同じ種類の年金ならば併せて受給が可能です。
- 老齢基礎年金✕老齢厚生年金
- 遺族基礎年金✕遺族厚生年金
- 障害基礎年金✕障害厚生年金
次の組み合わせは、併給できないようになっています。
- 老齢基礎年金×遺族基礎年金
- 老齢厚生年金×障害厚生年金
- 遺族基礎年金×障害基礎年金
基本的には、〇〇年金といった同じ種類の年金ならば併給が可能と覚えておけば大丈夫です。しかし、一部例外(〇〇年金×△△年金の組み合わせでもOKな例)もあります。
そこで組み合わせNGな一般例と一部の例外について、次の章で詳しく解説したいと思います。
原則は1人1年金!65歳未満だと遺族年金と自分の年金を選ぶ必要あり
年金の組み合わせ例で迷うのが、ちょうど年金の受給ラインとなる65歳前後の方ではないでしょうか?
そこで、まずは65歳未満の方を対象に、年金の組み合わせがNGな一般例についてご紹介したいと思います。
65歳未満の方で遺族年金の受給者は注意!老齢年金と選択する必要あり
例えば、65歳未満の方で遺族年金を受給している方は、このようなパターンで受け取っているかと思います。
- 遺族厚生年金
- 中高齢寡婦加算※
- 遺族基礎年金のみ
- 遺族基礎年金+遺族厚生年金
ここでの「子」とは18歳に到達した3月末日を経過していない・または障害等級1・2級の方は20歳未満となります。
このように組み合わせしだいで、(遺族年金の金額に差はあれど)65歳未満でも年金を受給する可能性は十分にあります。
そして、この遺族年金受給者が60歳を経過した時点で年金の選択を迫られるケースはこちら。
- 寡婦年金の受給資格がある場合
- 特別支給の老齢厚生年金の受給資格がある場合
例えば、「1.寡婦年金の受給資格がある場合」で解説します。
国民年金の第1号被保険者である夫が亡くなったとき、妻が受給できる年金のこと。
亡くなった夫が厚生年金の受給対象者だった場合、妻は寡婦年金と遺族厚生年金のいずれかを選択しなければなりません。
ちなみに寡婦年金については、次の記事でも詳しく説明しています。
また「2.特別支給の老齢厚生年金の受給資格がある場合」でも、遺族年金をそのまま受給するか?それとも特別支給の老齢厚生年金、つまり自分の年金を受給するか?決めなければなりません。
このように、65歳未満の方で複数の年金受給権が発生した場合には、いずれかを選択しなければならないのです。
65歳未満でも老齢年金をもらえる人の要件とは?ただし年齢制限あり
年金制度の改正前までは60歳で支給開始となっていた老齢厚生年金。ただ「60歳でもらえます」と言われていた年金が65歳まで受け取れないとなると困る人も出てきます。
そこで段階的にスムーズな受給年齢の引き上げを行うべく、「特別支給の老齢厚生年金」というものが設けられました。
具体的な対象年齢は以下のとおりです。
- 男性は1961年4月1日以前生まれの方
- 女性は1966年4月1日以前生まれの方
- 老齢厚生年金の受給資格期間があること
- 厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
なお、具体的に何歳から支給されるのか?については、年齢によって段階的に調整されています。
65歳以上なら自分の年金に加えて遺族年金も!ただし注意点あり
ここまでは65歳未満の方が年金を選択するケース、いわゆる「併給NG」についてみてきましたが、65歳以上となると「併給OK」となるケースが出てきます。
そこで、異なる種類の年金でも併給できるという「例外」についてみてみましょう。
遺族年金+老齢年金もOK!65歳以上なら自分の年金にプラスも
65歳になると、ようやく老齢基礎年金の開始となります。ここで1人1年金の原則に例外が適用されるのです。
例えばあなたが老齢基礎年金のみを受給する場合、遺族厚生年金はそのまま受給可能。
ただ、あなたが老齢厚生年金も受給できる場合は、遺族厚生年金との調整が入り調整額に応じた年金を受け取ることになります。
ちなみに遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給調整については、こちらの記事で図解も交えて詳しく説明していますので参考までにどうぞ。
いずれにしても、65歳以上になれば自分の年金と遺族年金は併給が可能とあり、自分の年金にプラスしてもらえるということになります。
自分の年金+遺族年金で本当に足りる?年金とは別に老後資金も必要
65歳以上となれば自分の年金にプラスしてもらえる遺族年金。
しかしこの2つは受給額に調整が入るので、純粋に年金✕2となるわけではありません。
特にあなたが老齢厚生年金を受給できる場合、遺族厚生年金として上乗せされる額は併給調整によって減額される可能性があります。
自分の老齢年金が老齢基礎年金しかない場合と比べてもらえる金額は多いものの、もし配偶者が亡くならずに存命だった場合は、世帯として考えると年金収入が老齢基礎年金✕2+老齢厚生年金✕2だったわけです。
もしあなたが「共働きだから老後にもらえる年金は多い」と考えているならば、想定よりも老後資金が足りなくなる恐れも…。
夫婦でなにごともなく老後を迎えられればいいものの、万が一の備えというは悪い結果を見越して準備した方が安心というもの。
もし老後の収入が「自分の年金+遺族年金」だけになったとしてもやりくりできそうか?という視点で、今いちどシミュレーションしてみることをおすすめします。
自分の年金と遺族年金でも老後の生活は厳しい?老後対策はおはやめに
基本的に65歳未満の方で遺族年金以外にも受給権が発生した場合、どちらか多い方の年金を選択することになります。
一方65歳以上となると、自分の年金に加えて遺族年金もプラスして受給できる場合もありますが、純粋に2倍もらえるわけではなく併給調整が行われます。
もし老後の生活を年金頼みにして設計していた場合。
遺族年金を受給するような状況になれば、世帯で受け取るはずだった年金総額は想定よりも少なくなりますので、老後の生活が厳しくなるかもしれません。
そこで、計画的に老後資金を積み立てたり、保険の見直しをして生命保険に加入しておくなど、手遅れになる前に早いうちから年金生活のことも考えて対策することをおすすめします。
65歳以上の方については、老齢厚生年金の全額に加えて、遺族厚生年金と老齢厚生年金の差額分を受け取るのが原則です。
したがって、遺族厚生年金より老齢厚生年金の方が金額が大きい場合、遺族厚生年金の支給額が0円の可能性もあります。
年金事務所で相談するなどして、あらかじめ確認しておくことをおススメします。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。