遺族年金はいつまでもらえる?受給条件と受給期間を確認しよう
家族のなかで最も収入の多い人が亡くなった場合、遺族年金がいつまで支給されるか不安に思う人は多いはず。貯金や遺産があっても、残された家族が十分生活していけるかどうかなんて分からないですよね。
遺族年金がいつまでもらえるかは、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」のどちらが支給されれるかで異なります。両方支給される場合はあわせて確認しておくといいでしょう。
寡婦加算と死亡一時金を両方もらうことはできません。それぞれの内容を把握しておくと、どちらかを選択し長期的な老後の資金計画が立てやすくなりますよ。
この記事では遺族年金がいつからいつまで給付されるのか説明します。
遺族年金には「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」がある
まず簡単に、遺族年金とはどのようなものなのか確認しておきましょう。
遺族年金とは、公的年金に加入している人(うち一定条件を満たす人)が亡くなったとき、妻や子などの遺族に対して支払われるものです。
遺族年金には「遺族厚生年金(※1)」と「遺族基礎年金(※2)」があります。
厚生年金保険の被保険者が死亡した場合や、被保険者期間中の傷病がもとで初診日から5年以内に死亡した場合などに支給される遺族年金。「妻」や「子、孫」、「55歳以上の夫、父母、祖父母」が受給対象者です。
「国民年金の被保険者」または「老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人」が死亡した場合に支給される遺族年金のこと。「子のある配偶者」や「子」が受給対象者です。
ただし個人事業主・フリーターなどの場合は国民年金に加入するため、受給できるのは遺族基礎年金のみです。
当サイトには遺族年金の申請・手続き方法や必要書類について解説している記事もあります。詳しくは「遺族年金の手続き・申請方法と必要書類」を参考にしてください。
では次の章から、遺族厚生年金・遺族基礎年金がいつまでもらえるか説明します。
遺族厚生年金の受給条件と受給期間・受給額
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者が死亡した場合や、被保険者期間中の傷病がもとで初診日から5年以内に死亡した場合に支給されるお金です。
受給対象者となるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族。受け取るためには、次のいずれかの場合に該当している必要があります。
- 厚生年金保険に加入中の人が在職中に亡くなった場合
- 厚生年金保険加入期間中に初診を受けた病気・ケガが原因で、初診日から5年以内に亡くなった場合
- 障害等級1級、2級に該当する障害厚生年金の受給権者が死亡した場合
- 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合
では遺族厚生年金は、いつから受給され、どのような場合に打ち切られるのでしょうか。
実は亡くなった人との関係によって、受給資格(年齢制限)や期間が決まっている場合もあるのです。遺族年金の受給には次のように優先順位があるので、優先順位の高い順に見ていきましょう。
一覧から該当するものを選択すると、説明している項目へ移動します。
【1】子のいる配偶者が遺族厚生年金を受給する場合
最も優先順位の高い「子のいる配偶者」が遺族厚生年金を受け取る場合、遺族基礎年金もあわせて受給することができます。
遺族厚生年金の受給条件と給付開始年齢は次のとおりです。
- 夫の場合は55歳以上
- 妻の場合は制限なし
- 夫の場合は原則60歳以上
- 妻の場合は制限なし
「子のいる夫」が遺族厚生年金の受け取りを開始できるのは60歳からですが、遺族基礎年金をもらっている場合は、60歳未満でも受給を始められます。
【2】子が遺族厚生年金を受給する場合
子の場合も、遺族厚生年金と遺族基礎年金を同時に受け取ることができます。
受給できる年齢は次のとおり。給付されるのは「死亡時の翌月分」からです。
- 18歳になる年度末を経過していない
- 1、2級の障害がある場合は20歳未満
この年齢を過ぎると、遺族年金の支給は打ち切られます。
【3】子のいない妻が遺族厚生年金を受給する場合
子のいない妻の場合、遺族厚生年金をもらうための条件(年齢制限)はなく、受給を開始する年齢にも決まりはありません。
しかし受給対象者となる妻が30歳未満の場合、遺族厚生年金の給付は5年間で終了します。
「子のいない妻」であれば、「中高齢寡婦加算」(遺族厚生年金の加算給付の一種)をあわせて受給できる場合も。受給条件は次のとおりです。
- 夫が死亡したときに妻が40歳以上である
- 生計を同じくしている子がいない※
この条件を満たせば、40歳から65歳になるまでのあいだ中高齢寡婦加算を受けられます。
【4】子のいない夫が遺族厚生年金を受給する場合
子のいない夫の場合、遺族厚生年金の受給条件と受け取り開始時期は次のとおり。
受給条件 | 55歳以上 |
---|---|
受給開始年齢 | 原則60歳 |
基本的に、遺族厚生年金の支給が始まるのは60歳からです。
【5】父母が遺族厚生年金を受給する場合
父母が遺族(厚生)年金をもらう場合は、父・母どちらであるかに関わらず年齢制限が設けられています。
受給条件 | 55歳以上 |
---|---|
受給開始年齢 | 原則60歳 |
【6】孫が遺族厚生年金を受給する場合
亡くなった人の孫が遺族厚生年金を受け取る場合は、次のいずれかに該当する必要があります。
- 18歳になる年度末を経過していない
- 1、2級の障害がある場合は20歳未満
遺族厚生年金の受け取り開始年齢に決まりはなく、死亡時の翌月分から受給することが可能です。
【7】祖父母が遺族厚生年金を受給する場合
祖父母が遺族厚生年金を受け取るための条件、受け取り開始年齢は次のとおりです。
受給条件 | 55歳以上 |
---|---|
受給開始年齢 | 原則60歳 |
「父母」の場合と同じですね。
遺族基礎年金の受給条件と受給期間
遺族基礎年金は、亡くなった人(国民年金保険の被保険者)に生計を維持されていた「子のある配偶者」と「子」がもらえる遺族年金。遺族基礎年金は、子が次の期限を迎えるまで受給可能です。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)まで
- 障害年金の障害等級1級または2級なら「20歳未満」が対象
子が複数人いる場合は、その人数に応じて遺族年金が支給されます。そのため子が成長して受給条件から外れるたびに、支給額が減額されるという仕組みです。
では遺族基礎年金は、いつまでもらえるのでしょうか。給付が停止されるのは、次のような場合です。
- 子が亡くなったとき
- 子が結婚したとき※
- 年金を受けている人により生計を維持されなくなったとき
- 直系血族・姻族以外と養子縁組したとき
- 子が上の受給期限年齢に達したとき
- 子が離縁したとき
- 障害1、2級の子が18歳以降に障害1、2級に該当しなくなったとき
次の項目で詳しく説明します。
寡婦年金・死亡一時金とは?受給資格や受給期間を確認しよう
遺族基礎年金を受給できなくなったときのために知っておきたいのが、寡婦年金(※1)と死亡一時金(※2)です。
夫を亡くした、女性が受給対象者となる年金のことをいいます。
家族が死亡したときに受給できるお金のこと。1回だけ受け取ることができます。
寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることはできないので、どちらを選択すればよいか確認が必要です。それぞれの受給条件と受給期間について、詳しく見てみましょう。
寡婦年金の受給条件と受給期間
寡婦年金は、次の受給条件を満たした場合にもらうことができます。
- 亡くなった夫が10年以上、第1号被保険者として保険料を納めた(※1)
- 亡くなった夫と10年以上婚姻関係にあった(※2)
- 妻(受給者となる人)は夫に生計を維持されていた
- 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けていない
- 亡くなった夫が障害基礎年金の受給権者だった場合、老齢基礎年金を受けたことがない
※2:事実婚も対象となる
寡婦年金は、受給者となる女性が60歳~65歳になるまでの5年間もらうことができます。
ちなみに寡婦年金によって受給される金額は、夫の老齢基礎年金額(第1号被保険者期間だけで計算した場合)の4分の3です。
死亡一時金の受給条件と受給額(手続きは死亡日から2年以内)
死亡一時金は、亡くなった人と生計を同じくしていた遺族が1回だけ受け取れるもの。
受給できるのは「国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36カ月以上ある人が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに亡くなった場合」です。
受給の優先順位は次のように決められています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
死亡一時金の金額は、亡くなった人が第1号被保険者として保険料を納めた月数に応じて決まります。次の早見表を参考にしてください。
保険料を納めた月数 | 死亡一時金の金額 |
---|---|
36カ月以上180カ月未満 | 120,000円 |
180カ月以上240カ月未満 | 145,000円 |
240カ月以上300カ月未満 | 170,000円 |
300カ月以上360カ月未満 | 220,000円 |
360カ月以上420カ月未満 | 270,000円 |
420カ月以上 | 320,000円 |
亡くなった人が付加保険料※も36カ月以上納めていた場合は、上の金額に8,500円が加算されます。
国民年金第1号被保険者または任意加入被保険者が、定額保険料に上乗せして納める保険料のこと。上乗せすることで、将来受け取る年金額を増やすことができます。
遺族年金はいつまで給付されるか必ず確認!終了時の対策もしておこう
この記事では、遺族年金の給付期間について説明しました。
「遺族厚生年金」の場合は受給対象者によって、遺族年金の支給がいつから始まるかが異なります。
打ち切られる場合もあるので、遺族年金をいつまでもらえるか確認しておきましょう。
家族が亡くなったときに支給されるのは遺族年金だけではありません。遺族年金が受け取れなくても寡婦年金・死亡一時金などの遺族給付がもらえる可能性があるので、確認しておくといいでしょう。
残された遺族が安心して暮らせるように、遺族年金だけでなく貯蓄や資産運用、相続対策にも目を向けてみることをオススメします。当サイトで用意している記事をぜひ読んでみてくださいね。
遺族基礎年金や遺族厚生年金は聞いたことがあっても、寡婦年金や死亡一時金は初めて知ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
権利があるのに受け取っていない方も少なからずいるようです。
この機会に、残された家族はどんな年金や一時金を受け取ることができるのか、整理しておくと良いでしょう。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。