住宅ローンで連帯債務を選ぶ3つのメリットと3つのデメリット
実家住まいならともかく、賃貸暮らしなら、なるべく早く家を買ってしまったほうが経済的なメリットが大きくなります。
しかし早く家を買うといっても、収入が少なければ希望する物件の購入が難しくなります。もしも夫婦共働きなら、連帯債務でそうした問題が解決できるかもしれません。
このページでは、連帯債務のメリットとデメリットについて解説しています。また、どんな人に連帯債務が適しているのかについても考えていきます。
住宅ローンにおける連帯債務とは?
「連帯債務」とは、1つの住宅ローンに対して、主債務者と連帯債務者を作る方法です。夫が主債務者になり、妻が連帯債務者になるというパターンが一般的でしょう。
連帯債務者は、主債務者と同じく、債務に対する全責任を負います。極端なことを言えば、銀行側は、いきなり妻に返済を求めることも可能ということです。
持分割合設定を間違えると贈与税を取られる?
持分割合を決める時には、じっさいの負担額と揃えることが基本です。
たとえば、4000万円の住宅ローンを組んで、夫が3000万円、妻が1000万円を払っていくとします。この場合、物件の所有権は支払額に合わせて、夫が75%で妻が25%にするべきです。
もしも「夫婦仲良く50%ずつにしよう」などとしてしまうと、夫が妻に25%に当たる1000万円分を贈与した、という扱いになってしまいます。
贈与は一括ではなく、ローンの年数で割って計算しますので、贈与税の非課税限界に当たる「年間110万円」は超えない可能性が高いでしょう。
しかし、その他に贈与があれば、年間合計で非課税限度額を超えてしまう危険性が出てきます。
持分割合設定を間違えると住宅ローン控除も損をする
持分割合設定は、住宅ローン控除にも関わってきます。住宅ローン控除は持分割合か、じっさいの負担金かの低い方で計算されます。
そのため、上記の例のようにじっさいの負担金と持分割合を変えてしまうと、住宅ローン控除でもらえるお金が減ってしまいます。
つまり、夫の控除は持分割合に合わせたの2000万円で計算されて、妻の控除は負担金に合わせた1000万円で計算されるということです。結果として、1000万円分の控除が無くなってしまいます。
連帯債務とペアローンと連帯保証との違いとは?
複数人で住宅ローンを組む方法には、連帯債務以外にも「連帯保証(収入合算)」と「ペアローン」があります。これらの違いを、表にしてまとめてみました。
連帯債務 | 収入合算 | ペアローン | |
---|---|---|---|
ローン契約の数 | 1本 | 1本 | 2本 |
債務者は誰か | 夫と妻 | 夫 | 夫と妻 |
保証人の有無 | 不要 | 妻が連帯保証人に | お互いが連帯保証人に |
団信加入 | 夫 | 夫 | 夫と妻 |
資産の権利者 | 夫と妻 | 夫 | 夫と妻 |
住宅ローン控除 | 夫と妻 | 夫 | 夫と妻 |
連帯債務は年収が低い共働き夫婦の住宅ローンプラン
連帯債務が適しているのは、年収が低めな共働き夫婦です。年収の低さを補って、借入額を大きく増やすことができるでしょう。
同じ共働き夫婦でも、年収が高い場合は、ペアローンの方がメリットが大きくケースが多いでしょう。
また、連帯債務を選びたい場合は、「フラット35」になることが多いため、フラット35で住宅ローンを組もうと決めている人も、選択肢として連帯債務を検討しても良いでしょう。
※ペアローンの特集記事はコチラ
連帯債務の3つのメリット
連帯債務には、以下のような3つのメリットがあります。
- 借入可能額が増える。
- 夫婦両方が住宅ローン控除を受けられる。
- 諸経費と手間はローン1本分だけ。
借入可能額が増える
連帯債務、ペアローン、収入合算(連帯保証)のどれを選んでも借入可能額は増えます。しかしその増え方には以下のような違いがあります。
- 連帯債務は、2人の収入を合計した年収があるとみなして計算する。
- ペアローンは、それぞれの収入で1本ずつ借入額を決める。
- 収入合算は妻の収入の何割かを夫の年収に足して計算する。
借入額から考えると、収入合算が一番不利で、次がペアローン、そして連帯債務が一番有利になります。
ペアローンと連帯債務なら、合計収入は同じなのに、どうして違うのか、と思われたかもしれません。これは年収と返済負担率の関係によって差が出ているのです。
銀行は、年収が低い人には低い返済負担率の融資しか許可しません。逆に高収入の人は余裕があるとみなして、かなり高い返済負担率でも貸出をおこないます。
例として、年収が「300万円」ずつの夫婦を想定してみましょう。
銀行にもよりますが、年収300万円なら、融資可能な返済負担率は25%程度です。つまり年間75万円が借りられます。これが夫婦2人分なので、倍の150万円が借入可能額となります。
600万円の年収がある場合、融資可能な返済負担率は35%程度です。つまり連帯債務なら、年間210万円が借入可能額となります。
債務者全員が住宅ローン控除を受けられる
連帯債務なら、夫と妻の両者が住宅ローン控除を受けられます。連帯債務の場合、控除額は持分割合に準じます。
ペアローンなら、それぞれが組んだローン額を基準にして控除額が決まります。収入合算はそもそも控除を受けられません。
諸経費と手間はローン1本分だけ
連帯債務は、諸経費と手間はローン1本分だけしかかからない、というのがペアローンと大きく違うところです。
事務手数料などの諸経費は意外に高くつきますので、出費を抑えることができます。また、面倒な審査が1回で終わるのも、うれしいところでしょう。
連帯債務の3つのデメリット
連帯債務には、以下のような3つのデメリットもあります。
- 団信に入れるのは主債務者だけ。
- 取り扱っていない金融機関が多数派。
- 将来の変化がリスクになる。
団信に入れるのは主債務者だけ
団信に入れるのは、主債務者である夫だけとなります。しかし連帯債務を使うということは、妻の収入もあてにしているということでしょう。
もしも団信に入れない妻が亡くなってしまった場合、なんの保証も受けられず、その後の返済に苦労するようになります。その点、ペアローンなら、亡くなった妻の分の借金は棒引きされます。
しかし夫が亡くなった場合は、連帯債務なら全額保証されますが、ペアローンなら夫の分の借金しか保証されません。
不謹慎な言い方をするなら、「夫が亡くなるなら連帯債務が有利」「妻が亡くなるならペアローン有利」となります。
※団体信用生命保険について詳しく知りたい方はコチラの記事へ。
ちなみに「フラット35」は例外で、連帯債務者も団信に入ることができるようになっています。
そもそも取り扱っていない金融機関が多数派
連帯債務を取り扱っている金融機関は少なく、選択肢が非常に狭まってしまいます。実質的には、連帯債務にしたいならフラット35を選ぶ、ということになってしまうでしょう。
対して、ペアローンは取り扱っている金融機関も多いため、それらを比較検討して選ぶ事が可能です。
将来の変化がリスクになる
連帯債務は、2人が将来も今と同じように働いていく、というのが前提条件になっています。そのため、アクシデントに弱いという欠点があります。将来の変化によるリスクについては、連帯債務もペアローンも変わりありません。
出産や子育てで、妻の収入が無くなったり、減ってしまったりする事はよくある事態です。合算した収入を基準に借入をおこなっているため、返済が厳しくなってしまうでしょう。
また、離婚してしまった場合は、そのまま返済していくことは難しくなってしまうでしょう。家を売りに出して、さらに借金が残ってしまうケースもよくみられます。
共働き夫婦はフラット35の連帯債務プランも選択肢に!
借入額を増やすためには、連帯債務かペアローンがおすすめです。「フラット35の連帯債務」などは、検討してみる価値が十分にあるでしょう。
ただし、こうした共同でローンを組む方法は、将来の変化に弱いという欠点もあります。よく考えてから進めるようにしましょう。
連帯債務でもペアローンでも、返済ができなくなった場合の対策を考えておくことが大切です。
返済がむずかしい場合リスケジュールという方法もありますが、一般的には売却が根本的な解決になります。
任意売却も選択肢としてありますが、できれば借入比率を抑えて普通の売却で解消できるような資金計画が必要でしょう。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。