子どものいない妻ももらえる『寡婦年金』とは?条件や金額、申請方法

遺族年金 2019.04.02

遺族基礎年金(国民年金)を受給できるのは、死亡者によって生計維持されていた「子のある配偶者」または「子」のみです。

つまり子どもがいないと、奥さんは遺族基礎年金がもらえないってことですね・・・。なんだか不公平な気もするわ。
そのような人のために設けられた給付金が「寡婦年金」です。
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者である夫が亡くなったとき、妻が受給できます。

寡婦年金を受給できる年齢は、60歳から65歳になるまで。ただし再婚したなどの理由により支給打ち切りとなる場合もあります。

妻が死亡した場合に夫が受給することはできません。

この記事では寡婦年金の受給条件や受給期間、金額、申請方法について見ていきましょう。

寡婦年金の受給資格をわかりやすく解説

先ほどもお伝えしたように、寡婦年金は死亡者の妻に支給されるもの。死亡した夫・遺された妻がそれぞれ次の条件を満たすことで、受給可能となります。

寡婦年金の受給条件(死亡者)
  • 第1号被保険者※として保険料を10年以上納めた
  • 障害基礎年金の受給権者ではない
  • 老齢基礎年金を受けていない
※いわゆる「国民年金加入者」のこと(20歳以上60歳未満の、個人事業主(自営業)や学生、無職の人など)
寡婦年金の受給条件(妻)
  • 60歳以上65歳未満
  • 老齢基礎年金を繰上げ受給※していない
  • 夫に生計を維持されていた
※通常(65歳)より受給開始を早めること
また死亡者とその妻の婚姻関係が、継続して10年以上であることも受給条件。事実婚関係の場合も寡婦年金の対象です。
事実婚関係とは

「内縁関係」のこと。婚姻の届出をしていないものの、次の要件を満たす関係のことです。

・当事者間に、社会通念上「夫婦の共同生活」と認められる事実関係を成立させようとする合意がある
・当事者間に、社会通念上「夫婦の共同生活」と認められる事実関係が存在している

寡婦年金の受給条件

「夫に生計を維持されていた」と認められるのは、どんな場合ですか?
夫が死亡した時点で、次の条件を満たしていた場合です。
「生計維持されていた」とは
・同居していた
(別居でも、仕送りしている・健康保険の扶養親族であるなどの場合は認められる)
・夫の死亡時、妻の「年収」が850万円未満、または「所得」が655.5万円未満

「生計維持されていた」と認められる条件

「年収」と「所得」の違いが、よく分かりません。
給与所得の場合は、「年収」から「給与所得控除」を引いた額が「所得」です。

給与所得の場合、所得は「年収-給与所得控除」

寡婦年金はいつからいつまで支給される?申請から受給までの流れ

寡婦年金の支給開始は、申請してから約3カ月後。基本的には「偶数月の15日」が支給日となります。

受給できるのは、60歳から65歳になった月までです。

ただし状況の変化により支給停止となることもあるので、確認しておきましょう。

では寡婦年金の受給期間について、次の項目に分けて説明していきます。

  1. 申請から初回受給までの流れ
  2. 寡婦年金の受け取り日
  3. 寡婦年金が支給停止となるケース

【1】寡婦年金の初回支給は『申請から約3カ月後』

寡婦年金って、いつから受け取れるんですか?
初回の受け取りは、申請してから約3カ月後です。

申請から初回受給までの流れは、次のようになっています。

寡婦年金の申請・受給までの流れ
  1. 寡婦年金を請求
  2. 約60日後:「年金証書・年金決定通知書」が日本年金機構から届く※
  3. 約50日後:初回受給

寡婦年金を申請してから初回支給までの流れ

寡婦年金の初回支給が行われるのは「受給権を取得した月(受給権を取得した月が60歳未満の場合は、60歳に到達した月)」の翌月。

初回に受け取る金額は、受け取り開始月から直近の前月分までです。

え~っと・・・よくわからないわ。
これは「年金決定通知書」に記載されているので、日本年金機構から届いたら確認しておきましょう。

【2】寡婦年金の支給は『偶数月の15日』

寡婦年金って、定期的にもらえるんですよね?
寡婦年金は、偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)の15日に支給されます。

15日が土・日・祝日の場合は、その直前の平日が支給日です。

ただし初回受給の場合、過去の分をさかのぼって受給する場合など、支給が奇数月になることもあります。

【3】寡婦年金の支給はいつまで?打ち切りとなる5つのケース

寡婦年金って、いつまで受け取れるんですか?
受給者が次のいずれかに該当すれば、その翌月から寡婦年金は受け取れなくなります。
寡婦年金の支給が打ち切りとなるケース
  • 65歳に達した(誕生日の前日)
  • 亡くなった
  • 婚姻した※
  • 直系血族、直系姻族以外の人の養子になった
  • 老齢基礎年金の繰上げ請求を行った
※事実婚を含む
寡婦年金が支給されるのは、65歳に達した月の分まで。その後、受給条件を満たせば老齢年金の受給が始まります。

公的年金には「一人一年金」という考え方があり、寡婦年金と老齢年金を併給することはできません。

また65歳になっていなくても、再婚などにより寡婦年金が打ち切りとなる場合もあります。

交通事故などにより損害賠償を受けた場合は、事故発生日から一定期間のあいだ、寡婦年金が一部または全額不支給に。

「一定期間」ってどれくらいですか?
支給停止期間は最長3年。受給者に応じて調整されます。

寡婦年金から差し引かれる金額は、損害賠償金のうち「生活補償費」に相当する額。慰謝料・医療費などは対象外です。

寡婦年金の金額は『夫の老齢基礎年金額の4分の3』

寡婦年金の支給額は、夫の老齢基礎年金の額(死亡月の前月・第1号被保険者の期間のみで計算)の4分の3です。

寡婦年金の金額は夫の老齢基礎年金の額の4分の3

老齢基礎年金は満額で780,100円(2019年4月現在)ですが、保険料を納めた期間や免除・猶予制度を利用した期間により受給額が異なります。

国民年金の受給額の計算方法(平成31年度)

※「平成21年4月以降に納付・免除した場合」や「平成21年3月分以前」については、計算式が異なります。

老齢基礎年金の支給額についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

寡婦年金の受給額には、税金がかかりますか?
寡婦年金は非課税です。所得税も相続税もかかりません。

寡婦年金の申請方法・必要書類

寡婦年金の申請手続きは、次のいずれかで行えます。

寡婦年金の申請手続きを行える場所
  • 市区町村役場
  • 年金事務所
  • 年金相談センター

申請の際には、年金請求書と次の書類を合わせて提出してください。

寡婦年金の申請に必要な書類
書類 補足事項
年金手帳 提出できない場合は理由書を提出
戸籍謄本
(記載事項証明書)
受給権発生日以降、提出日前6カ月以内に交付されたものを提出
世帯全員の住民票の写し
死亡者の住民票の除票 「世帯全員の住民票」に含まれている場合は不要
請求者の収入が確認できる書類 <例>
・所得証明書
・課税(非課税)証明書
・源泉徴収票
受取先金融機関の通帳など 次の項目が記載されているもの
・カナ氏名(本人名義)
・金融機関名
・支店番号や口座番号
※請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付不要
年金証書 他の公的年金をもらっている場合のみ
申請時には、これらの書類と一緒に印鑑も持参しましょう。認印でも大丈夫ですよ。

夫が第3者行為(交通事故など)によって死亡した場合は、次の書類も必要です。

必要書類(死亡原因が第三者行為の場合)
書類 補足
第三者行為事故状況届 所定の様式あり
交通事故証明 または事故内容が確認できる書類
(新聞の写しなど)
確認書 所定の様式あり
扶養していたことがわかる書類(※1) <例>
・源泉徴収票
・健康保険証の写し
・学生証の写し
損害賠償金の算定書(※2) 受領額がわかるもの
(示談書など)
※1:被害者に被扶養者がいる場合のみ提出
※2:すでに決定済みの場合のみ提出
寡婦年金の申請期限は、原則受給条件を満たした日から5年です。期限を過ぎると時効となり、寡婦年金をもらえなくなるので注意してください。

寡婦年金がもらう場合も、支給金額や打ち切り後の資金に注意

夫が亡くなったとき「子のない妻」は遺族基礎年金をもらえませんが、「寡婦年金」を受け取れる可能性があります。

寡婦年金の金額は、亡くなった夫がもらう予定だった老齢基礎年金の「4分の3」の額です。

そのため夫が保険料を滞納していると、寡婦年金の金額が少なくなったり、受給条件を満たさず不支給となったりする恐れも。納付状況を把握していない人は、この機会に確認してみるのもいいかもしれません。

65歳になると老齢年金を受け取ることになるため、寡婦年金の支給は終了します。自分の老齢年金や貯蓄、収入など、老後資金をしっかり準備しておきましょう。

※記載の情報は2019年4月現在のものです。

監修者メッセージ

老齢年金については該当する人に事前に請求書が送られてきますが、寡婦年金などの遺族年金については請求書が送られてくることはありません。

つまり自分で把握して自ら請求する必要がありますので、夫や家族が亡くなったときに何を請求することができるのか、一度整理しておくようにしましょう。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。

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