子どものいない妻ももらえる『寡婦年金』とは?条件や金額、申請方法
遺族基礎年金(国民年金)を受給できるのは、死亡者によって生計維持されていた「子のある配偶者」または「子」のみです。
寡婦年金を受給できる年齢は、60歳から65歳になるまで。ただし再婚したなどの理由により支給打ち切りとなる場合もあります。
妻が死亡した場合に夫が受給することはできません。
この記事では寡婦年金の受給条件や受給期間、金額、申請方法について見ていきましょう。
寡婦年金の受給資格をわかりやすく解説
先ほどもお伝えしたように、寡婦年金は死亡者の妻に支給されるもの。死亡した夫・遺された妻がそれぞれ次の条件を満たすことで、受給可能となります。
- 第1号被保険者※として保険料を10年以上納めた
- 障害基礎年金の受給権者ではない
- 老齢基礎年金を受けていない
- 60歳以上65歳未満
- 老齢基礎年金を繰上げ受給※していない
- 夫に生計を維持されていた
「内縁関係」のこと。婚姻の届出をしていないものの、次の要件を満たす関係のことです。
・当事者間に、社会通念上「夫婦の共同生活」と認められる事実関係を成立させようとする合意がある
・当事者間に、社会通念上「夫婦の共同生活」と認められる事実関係が存在している
(別居でも、仕送りしている・健康保険の扶養親族であるなどの場合は認められる)
・夫の死亡時、妻の「年収」が850万円未満、または「所得」が655.5万円未満
寡婦年金はいつからいつまで支給される?申請から受給までの流れ
寡婦年金の支給開始は、申請してから約3カ月後。基本的には「偶数月の15日」が支給日となります。
受給できるのは、60歳から65歳になった月までです。
ただし状況の変化により支給停止となることもあるので、確認しておきましょう。
では寡婦年金の受給期間について、次の項目に分けて説明していきます。
【1】寡婦年金の初回支給は『申請から約3カ月後』
申請から初回受給までの流れは、次のようになっています。
- 寡婦年金を請求
- 約60日後:「年金証書・年金決定通知書」が日本年金機構から届く※
- 約50日後:初回受給
寡婦年金の初回支給が行われるのは「受給権を取得した月(受給権を取得した月が60歳未満の場合は、60歳に到達した月)」の翌月。
初回に受け取る金額は、受け取り開始月から直近の前月分までです。
【2】寡婦年金の支給は『偶数月の15日』
15日が土・日・祝日の場合は、その直前の平日が支給日です。
ただし初回受給の場合、過去の分をさかのぼって受給する場合など、支給が奇数月になることもあります。
【3】寡婦年金の支給はいつまで?打ち切りとなる5つのケース
- 65歳に達した(誕生日の前日)
- 亡くなった
- 婚姻した※
- 直系血族、直系姻族以外の人の養子になった
- 老齢基礎年金の繰上げ請求を行った
公的年金には「一人一年金」という考え方があり、寡婦年金と老齢年金を併給することはできません。
また65歳になっていなくても、再婚などにより寡婦年金が打ち切りとなる場合もあります。
交通事故などにより損害賠償を受けた場合は、事故発生日から一定期間のあいだ、寡婦年金が一部または全額不支給に。
寡婦年金から差し引かれる金額は、損害賠償金のうち「生活補償費」に相当する額。慰謝料・医療費などは対象外です。
寡婦年金の金額は『夫の老齢基礎年金額の4分の3』
寡婦年金の支給額は、夫の老齢基礎年金の額(死亡月の前月・第1号被保険者の期間のみで計算)の4分の3です。
老齢基礎年金は満額で780,100円(2019年4月現在)ですが、保険料を納めた期間や免除・猶予制度を利用した期間により受給額が異なります。
老齢基礎年金の支給額についてさらに詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
寡婦年金の申請方法・必要書類
寡婦年金の申請手続きは、次のいずれかで行えます。
- 市区町村役場
- 年金事務所
- 年金相談センター
申請の際には、年金請求書と次の書類を合わせて提出してください。
書類 | 補足事項 |
---|---|
年金手帳 | 提出できない場合は理由書を提出 |
戸籍謄本 (記載事項証明書) |
受給権発生日以降、提出日前6カ月以内に交付されたものを提出 |
世帯全員の住民票の写し | ― |
死亡者の住民票の除票 | 「世帯全員の住民票」に含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類 | <例> ・所得証明書 ・課税(非課税)証明書 ・源泉徴収票 |
受取先金融機関の通帳など | 次の項目が記載されているもの ・カナ氏名(本人名義) ・金融機関名 ・支店番号や口座番号 ※請求書に金融機関の証明を受けた場合は添付不要 |
年金証書 | 他の公的年金をもらっている場合のみ |
夫が第3者行為(交通事故など)によって死亡した場合は、次の書類も必要です。
書類 | 補足 |
---|---|
第三者行為事故状況届 | 所定の様式あり |
交通事故証明 | または事故内容が確認できる書類 (新聞の写しなど) |
確認書 | 所定の様式あり |
扶養していたことがわかる書類(※1) | <例> ・源泉徴収票 ・健康保険証の写し ・学生証の写し |
損害賠償金の算定書(※2) | 受領額がわかるもの (示談書など) |
※2:すでに決定済みの場合のみ提出
寡婦年金がもらう場合も、支給金額や打ち切り後の資金に注意
寡婦年金の金額は、亡くなった夫がもらう予定だった老齢基礎年金の「4分の3」の額です。
そのため夫が保険料を滞納していると、寡婦年金の金額が少なくなったり、受給条件を満たさず不支給となったりする恐れも。納付状況を把握していない人は、この機会に確認してみるのもいいかもしれません。
65歳になると老齢年金を受け取ることになるため、寡婦年金の支給は終了します。自分の老齢年金や貯蓄、収入など、老後資金をしっかり準備しておきましょう。
老齢年金については該当する人に事前に請求書が送られてきますが、寡婦年金などの遺族年金については請求書が送られてくることはありません。
つまり自分で把握して自ら請求する必要がありますので、夫や家族が亡くなったときに何を請求することができるのか、一度整理しておくようにしましょう。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。