いらない土地の処分方法4つを詳しく紹介!持ち続ける欠点も解説
「相続した土地の使いみちがない」「子どもが遠方で家を買ったから、田舎の土地が余ってしまった」など、土地を扱いきれずお困りの方もいるのではないでしょうか。
中には「いらない土地だから放置したい」「使っていない土地だから固定資産税を払いたくない」と考える方もいるでしょう。
しかし土地は所有する限り、管理と固定資産税の支払いが必須です。では、どうすればよいのでしょうか?
いらない土地の処分には、「寄付」「相続放棄」「土地活用」「売却」の4つの方法があります。
当記事では知識・経験がない方も安心できるよう、いらない土地を持ち続けるデメリットを踏まえながら、土地の処分方法を詳しく紹介します。
損害賠償につながる可能性も?いらない土地を持ち続けるデメリット
いらない土地を所有し続けると、次のようなデメリットがあります。
- 固定資産税の支払いが続く
- 土地の管理が必要
- 損害賠償につながる可能性がある
- 相続ごとに相続税を支払う可能性がある
土地には所有権があり、その保有者は土地用途を決める権利を持つことができます。
しかし同時に、「税金の支払い義務」や「土地の管理責任」も負うのです。
土地にかかる固定資産税の計算方法は、次の記事で詳しく解説しています。
また土地の管理も、見逃せないデメリットです。管理されていない土地には、トラブルが起こる可能性が。雑草が生い茂るだけでも、害虫の発生や放火などのリスクがあるのです。
管理を怠ると、損害賠償につながる可能性も。そのため一部の自治体では、いらない土地でも雑草の除去を義務化しています。
そして子どもへ相続する場合、相続税の支払いが必要となる可能性があります。この可能性は相続のたびに発生し、固定資産税に加えて相続を受ける家族の税負担が増えるのです。
将来土地の価値が上がり、土地売却などで利益を生むことができればメリットに転じるかも知れませんが、その保証はありません。
- 寄付
- 相続放棄
- 土地活用
- 売却
処分の仕方や注意点などは、それぞれでまったく異なります。順番にみていきましょう。
【いらない土地の処分方法1:寄付】贈与税など税金の支払いに注意
いらない土地を寄付する場合、次の3者が寄付先の候補となります。
- 国や自治体
- 個人
- 法人
また法人の中には、いらない土地でも事業目的に合うから欲しいという企業があるかもしれません。
ただし寄付には、次のような注意点があります。
寄付先 | 注意点 |
---|---|
国や自治体 | 使用目的がなければ、寄付を断られる |
個人 | 寄付を受けた個人に贈与税がかかる 所有権移転登記に費用がかかる |
法人 | 寄付をした側に所得税と住民税がかかる※ 所有権移転登記に費用がかかる |
使用目的のない土地の受け入れは、自治体にとってデメリットなのです。
また個人や法人ヘ寄付する場合、税金の支払いが必要となります。
ほかにも、個人への寄付では「寄付を受けた側に贈与税」の、法人への寄付では「寄付をした側に所得税と住民税」の支払い義務が発生する可能性が。
ここからは「土地を無償譲渡する際に発生する税金」について、お伝えします。
個人へのいらない土地の譲渡は「贈与税」に注意!計算方法を解説
- 土地の相続税評価額(路線価)から、110万円の基礎控除を差し引く
- 1の控除後の課税価格に対応した税率を掛ける
- 2から、1の控除後の課税価格に対応した控除額を差し引く
税率と控除額一覧は、次のとおり。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
「一般贈与財産」とは、他人や配偶者・兄弟から贈与される財産、また直系尊属から未成年の子へ贈与される財産をいいます。
たとえば、「土地の評価額が1110万円の場合」の贈与税額は、次のように計算します。
このように区別しているのは、国が若い世代に土地を活用してもらいたいから。
ちなみに夫婦間では、居住用地の譲渡であれば控除額の更に大きい「贈与税の配偶者控除」がありますが、いらない土地の贈与では適用できないでしょう。
法人へのいらない土地譲渡には「所得税・住民税」支払いの可能性あり
法人へ土地を寄付する場合、「値上がり益」があれば譲渡する側に「所得税・住民税の支払い義務」が発生します。
ちなみに譲渡では、所得税と住民税合わせて値上がり益の約20%(保有期間が5年未満は約40%)の税金がかかります。
不動産譲渡による所得税については、次の記事も参考にしてみてください。
【いらない土地の処分方法2:相続放棄】相続放棄後も管理責任は残る
土地の所有権は、相続を受ける場合にのみ「相続を受けずに放棄する」という選択ができます。
ただし、次のような点には注意してください。
- 相続が決まった日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ手続きが必要
- 預金など、他の資産もすべて放棄することになる※
- 相続放棄をしても管理責任は残る
- 相続順位の順に、いらない土地の所有権が移る
また注意点の4つ目、相続順位も重要です。たとえば親から土地を相続する場合、優先順位の高い相続人が相続放棄すると、相続権が優先順に「子→親の親→親の兄弟」と移ります。
そのため誰もその土地がいらないのであれば、全員がすべての相続を放棄する必要があります。
兄弟間や親戚間できちんと話し合い、合意のうえで進める方がよいでしょう。
【いらない土地の処分方法3:土地活用】2つの法律を事前に確認!
これまでにお伝えしたように、いらない土地の寄付や放棄は簡単にはできません。そこでオススメしたいのは、「土地活用」です。
土地活用であれば、収益を得ることもできます。
つまり、「いらない土地」を「いる土地」にするのです。土地活用には、次のような例があります。
- アパート、マンションを建てる
- 駐車場にする
- 店舗経営をする法人、個人に貸す
- 太陽光発電システムを置く
たとえば不便な立地の土地でも、太陽光発電システムを置くことができれば、電力会社から収益を得ることができます。
ただし自分の土地に適用される法律については、確認が必要です。
法律により活用方法の制限や、建物の制限がかかる可能性があります。
土地を活用する際には、次の法律を確認ください。
・都市計画法(※1)
・建築基準法(※2)
都市の計画内容や策定手順などを定めている法律。
「低層住居のみに限定」「制限内の店舗は可」など用途が決まっている地域(用途地域)があり、その土地では用途にそぐわない土地活用は制限されます。
建物を建てるためのルールを定めた法律。用途の制限や建築物の広さ・高さの制限などがあり、それらに合わせた土地活用をする必要があります。
自分の土地にどんなルールが適用されるかについては、各自治体の都市計画図で調べることができます。インターネットで公開している自治体もありますので、一度調べてみてくださいね。
【いらない土地の処分方法4:売却】予想外の費用負担・トラブル注意
土地活用が見込めない場合、売却を検討してみましょう。次が、土地を売却する一般的な手順です。
- 土地相場の調査、測量・境界測定
- 不動産会社選択(査定・媒介契約)
- 売却開始、交渉
- 締結(契約)、決済
- 引き渡し
ただし慣れない方にとって、いらない土地を売るのはハードルが高いかもしれません。
「自分がいらない=他人もいらない」という可能性があり、買い手を見つけづらいのです。
いらない土地を売る上でのポイントも、確認しておきましょう。
いらない土地を売るポイント1:まずは草むしりなど土地の掃除から!
キレイで見た目の良い土地は、早く高く売れる可能性があります。
そのため土地の売却前に、まずは雑草処理などをしてキレイな更地にしておきましょう。
ちなみに土地は放置をすると気づかぬうちに汚れてしまうため、更地にした後も定期的なメンテナンスが必要です。
整地にして土地を早く・高く売る方法や費用については、次の記事で詳しく紹介しています。一度確認してみてくださいね。
いらない土地を売るポイント2:土地売却が得意な頼れる業者を選ぶ
いらない土地を売る場合、不動産会社選びはとても重要です。
よい業者を見つけるために、次のポイントを確認しましょう。
- 土地売却が得意かどうか
- 担当者の態度や仕事ぶりはよいか
- 企業規模に関わらず信頼できる業者かどうか
まずは1つ目。不動産会社にも、得意・不得意の分野があります。土地売却が得意かどうか、次の3つの方法で調べてみましょう。
- 会社のホームページ
- 新聞の折り込みチラシ
- 不動産ポータルサイト
2つ目の担当者や3つ目の企業自体については、信頼できるかどうかが大切なポイント。企業規模については大手業者と中小業者、それぞれメリット・デメリットがあるので、慎重に選びましょう。
不動産会社の選び方については、次の記事でも詳しく紹介しています。
いらない土地を売るポイント3:広すぎる土地は分割して扱いやすく
土地が広すぎる場合は、分割すると買い手がつきやすくなるかも知れません。土地を分割することを、「分筆登記(ぶんぴつとうき)」といいます。
分筆登記は、「土地家屋調査士」という専門家への依頼がスムーズ。費用が高額になる場合は、測量など一部の専門分野だけ土地家屋調査士事務所または測量会社に依頼をして、登記は自分で行うことも可能です。
このように土地売却はすべての作業を専門家に依頼すると、詐欺などのトラブルが発生する可能性や、予想外の費用がかかる可能性があります。
そのため「自分でできることは、やってみる」ことが大切です。
いらない土地の処分は慎重に!自分が納得する方法を見つけましょう
しかし土地の処分方法によっては、想定外の費用がかさむ可能性や、親族間や売り手・買い手間などでトラブルが発生する可能性があります。
これらのトラブルを未然に防ぐには、自分でできる調査や手続きなどは積極的に行うことと、関係者ときちんと相談し合うことが大切。
また今はいらない土地でも、「祖父母が生前に住んでいた」「子どもの頃よく遊んでいた」など、中には思い出の詰まった大事な土地もありますよね。決して焦らず、あなたや家族にとって納得のいく処分方法を見つけましょう。
核家族化により、相続されない、あるいは相続できないという不動産が増える傾向にあります。両親が亡くなり実家の家や土地を相続しようかどうしようかと、悩む人も増えています。
相続放棄をしようとしても、最終的に土地の所有者(管理者)が明確になるまでは、不動産の管理は相続権者の義務です。
国では、土地の相続放棄の負担を少なくする法整備や、「所有者不明の土地」が生まれないよう、土地基本法改正の動きもあり、「いらない土地」の処分方法は、今日的な大きな課題になっています。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。