農地(田んぼや畑)の売買方法や手続きの流れをわかりやすく解説
当記事では農地の売買に関する、次のような疑問を解決します。
・相続した農地を売るにはどうしたらいいの?
・農地の売却にかかる税金について知りたい
現在所有している農地の売却を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
農地に相場価格はない!全国平均でみると価格は年々減少傾向に
全国農業会議所の調査によると、全国の農地売買価格は平成7年以降22年連続下落しているとのこと。
次のグラフを見ると、農地価格は年々なだらかに減少していることが分かります。
価格の下落要因は、おもに「農産物価格の低迷」「農地の買手の減少」「後継者不足」など。
農家の高齢化や地域の過疎化に伴って、年々農地の売却が深刻化していることが伺えます。
自身が所有する農地の価格を知りたいときは、専門の業者へ査定を依頼する必要があります。
家の近くで農地査定の依頼ができる不動産会社を探す場合は、次の一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
査定自体は無料でおこなってもらえるので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
都市計画区域内にある農地であれば「土地総合情報システム」というサイトを利用して、近隣の取引事例を参考にできます。
土地総合情報システムの使いかたは、次の記事を参考にしてください。
農地の売買方法は2つ!条件を満たさないと売却できない可能性も
農地の売買方法は「農地のまま売却する方法」「別の用途に転用して売却する方法」の2パターン。
いずれの方法も、市町村の農業委員会から許可がおりないと売却できません。
それぞれの売買方法について、詳しくみていきましょう。
【農地の売買方法その1】農地を農地のまま売買する方法
農地を農地のまま売買する場合、買手は農業を営む人に限られます。
さらに農地を取得する側は、次の条件を満たさなければなりません。
- 機械や労働力を適切に利用できる計画をもつ
- 農作業に年間150日以上従事すること
- 一定の面積を経営すること
- 周辺の農地利用に支障をきたさないこと
条件を満たす農家や後継者が見つからない場合は、市町村の農業委員会から買手のあっせんを受けることが可能です。
農業委員会からのあっせんで売却する場合はあまり利益を期待できませんが、所得税が控除されるなどの優遇措置を受けられるメリットがあります。
【農地の売買方法その2】農地を転用して売買する方法
転用とは農地を別の用途で利用できるよう、農業委員会に申請をおこなうこと。
じつはすべての農地が転用によって売却できる、というわけではありません。
農地転用の可否は「立地基準」と「一般基準」の2つの基準から判断されます。
それぞれの基準内容は次のとおり。
立地基準 | 農地の立地を5つの種類に区分して、転用の可否を判断する基準 |
---|---|
一般基準 | 農地転用の目的を達成できるかどうか、を判断する基準 |
まずは農地を5つに区分して転用可否を判断する、立地基準の内容です。
区分 | 許可の可否 |
---|---|
農用地区域内農地 市町村が定める農用地区域 |
原則不許可 |
甲種農地 特に良好な農営条件をもつ農地 |
原則不許可 |
第1種農地 良好な農営条件をもつ農地 |
原則不許可 |
第2種農地 市街化が見込まれる農地 |
周辺の土地に代替えがない場合は許可 |
第3種農地 市街化の傾向が著しい区域の農地 |
原則許可 |
この5区分のなかで、農地転用が認められるのは「第3種農地」と「第2種農地」のみ。
農地として優良な地域ほど転用条件が厳しく、農業の影響が少ない市街区域では転用の許可がもらいやすくなっています。
次に一般基準のおもな条件です。
一般基準では次のような審査項目を一つひとつ確認して、農地転用許可を判断します。
- 転用に必要な資金や信用がある
- 転用する農地の権利者から同意を得ている
- 許可後は遅滞なく申請目的を果たす見込みがある
- 事業について行政庁の免許や許可などを得ている
- 事業の目的に適正な広さの農地である
このような審査項目をクリアした農地でなければ、転用して売却することができないのです。
自身の農地がそれぞれの基準を満たすかどうかは、近くの農業委員会や役所の農業政策課に問い合わせてみましょう。
農地の売却が難しい場合は、農地バンクを利用したほかの農家への貸し付けも検討してみてください。
農地バンク制度について、次の記事で詳しく解説しています。
農地を売買するおもな流れや手続きをおさえよう
農地を売却するときの、おもな流れは次のとおり。
- 農地の売却方法を決める
- 買主を探す
- 農業委員会に許可の申請
- 売買契約を結ぶ
- 所有移転の本登記と引渡し
農地を売買するには、必ず農業委員会の許可が必要です。
たとえ売主と買主との間で契約が成立したとしても、農業委員会からの許可が降りない限り、土地の所有権を移すことはできません。
トラブルを避けるためにも、きちんと売買の許可を得たうえで、売買契約を結びましょう。
売買契約の締結後は、通常の不動産売却と同じように所有権移転の本登記や土地の引渡しへと進めていきます。
農地の売買にかかる税金は通常の土地売却とほぼ一緒
農地の売却にかかる税金には、通常の不動産売却と同じように、売買契約書にかかる印紙税や仲介業者に支払う仲介手数料などがあります。
また農地を売却して利益が出れば、その利益に対する譲渡所得税が必要に。
売却前にどのくらいの税金や費用がかかるのか、調べておくといざ必要となったときに安心です。
不動産売却にかかる税金の計算方法や支払い方法などは、次の記事を参考にしてください。
農地の売買方法を理解してスムーズに手続きを進めよう
また農地は通常の不動産のように、すぐに売却活動を進められるわけではありません。
農業委員会から許可を得ることではじめて、売却可能となるのです。
農地を売却する方法は「農地のまま売却する」「転用して売却する」の2つ。
農地のまま売却する場合は、農業委員会から買手のあっせんを受けられたり、税金の優遇措置を受けられたりなどのメリットがあります。
ただし農地のままでは、農家以外に売却することができません。
農地を宅地などの地目に転用すれば農家以外の人にも売却可能ですが、転用許可の条件をすべて満たす必要があります。
農地売却の手続きは通常の不動産売却と異なるため、方法や手順をよく確認しておきましょう。
農地を購入する人が農業目的で購入する場合は、取引対象になる土地は「農地」であって「宅地」ではないので、宅建業法の管轄外になります。
宅建業者の仲介は必要なく、仮に業者が仲介したとしても、取引上で紛争や損害を蒙ることがあっても、保証協会の弁済対象にはならないので、売主・買主は慎重に取引を進めて下さい。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。