老後資金は夫婦でいくらが目安?思わぬ破産リスクにも備えて貯蓄!

老後資金を、夫婦2人で本格的に準備したいと思っています。今までは「なんとなく貯金する」って感じだったんですけど、きちんと目標額・貯め方などを話し合うつもりです。
それはいいことですね。
でも、いろいろ調べてみたら「夫婦2人の老後資金は1億円貯めましょう!」とか「夫婦2人世帯に必要な貯蓄額は5,000万円!」とか書いてあって・・・そんなに貯められる自信がないし、結局いくら貯めればいいのか分からないわ。
たしかに、いろんな意見がありますね。しかし国の調査結果によると、実は貯蓄額が5,000万円に満たない人も多いです。

「とりあえず1,500万円くらい貯めておけばいい」という意見もあるんですよ。

じゃあ、どの意見を信じればいいんですか?
巷で言われている必要額はあくまで「目安」と考えてください。
生活費や年金の受給額などは、世帯によって違います。また医療費・介護費用などの高額な出費が、いつ生じるかも予想はできません。そのため老後資金がいくら必要かは、家庭によって異なるんです。

この記事では客観的なデータをもとに、夫婦2人世帯が貯蓄する老後資金の必要額の目安について解説します。また老後資金は、思わぬところで不足する可能性も。その代表的なケースや防止策も確認していきましょう。

夫婦2人世帯の老後資金はいくら必要?目安額を考察!

まずは夫婦世帯(世帯主が60代以上)の貯蓄額がどうなっているか、その実態を見てみましょう。

ここでは総務省・政府統計のデータをもとに、次の項目に分けて考察していきます。
  1. 単純に中央値だけを見ると「1,639万円」が目安額
  2. 年間収入別の平均貯蓄額も参考になる

老後資金の目安額の1つは『夫婦で1639万円』

総務省による「平成29年 家計調査報告」によると、2人以上の高齢者世帯(世帯主が60代以上)の場合、貯蓄額の中央値は1,639万円でした。

「中央値」って何ですか?
データ数値の高い・または低い順に並べたとき、真ん中にくる値のことです。
それって「平均」とどう違うんですか?
この場合、平均値だと貯蓄が極端に多い人の影響を受けやすいんです。

中央値の方が、より「普通」の水準に近い貯蓄額と言えます。

年間収入別に平均貯蓄額を見てみよう

年収が違えば、貯蓄額にも差は出るもの。自分と同額の収入を得ている人が、どれだけ貯蓄しているのかも気になりますよね。

政府統計「平成26年全国消費実態調査」の結果から、年間収入別の平均貯蓄残高(60代・2人世帯)を見てみましょう。

平均貯蓄額(世帯主が60代、2人以上の場合)
年間収入階級
(平均世帯人数)
平均貯蓄残高
200万円未満(2.31人) 約1042万円
200万円~300万円未満(2.34人) 約1280万円
300万円~400万円未満(2.39人) 約1622万円
約1622万円400万円~500万円未満(2.54人) 約1865万円
500万円~600万円未満(2.61人) 約2278万円
600万円~800万円未満(2.87人) 約2473万円
800万円~1000万円未満(3.12人) 約2690万円
1000万円~1250万円未満(3.28人) 約2991万円
1250万円~1500万円未満(3.40人) 約3625万円
1500万円以上(3.14人) 約5754万円
収入が多い世帯ほど、貯蓄額も多くなっていますね。
このデータは、個人事業主や会社役員から一般的な会社員、無職の人まで、すべて含んだものです。

次は2人以上の勤労者世帯(会社員など)の場合に絞って、平均貯蓄額を見てみましょう。

平均貯蓄額(世帯主が60代、2人以上の勤労者世帯の場合)
年間収入階級
(平均世帯人数)
平均貯蓄残高
200万円未満(2.38人) 約507万円
200万円~300万円未満(2.47人) 約832万円
300万円~400万円未満(2.43人) 約1202万円
400万円~500万円未満(2.53人) 約1506万円
500万円~600万円未満(2.58人) 約1859万円
600万円~800万円未満(2.83人) 約1989万円
800万円~1000万円未満(3.11人) 約2574万円
1000万円~1250万円未満(3.38人) 約2508万円
1250万円~1500万円未満(3.53人) 約3400万円
1500万円以上(3.31人) 約4828万円
個人事業主や会社役員などを含めた場合に比べると、平均貯蓄残高が少ないですね。
そうですね。しかし、これはあくまで「平均」。老後資金の必要額の「ベース」として考えましょう。

想定できる将来の生活費・老後のあらゆるリスクも考慮したうえで、貯蓄額を考えるのがオススメですよ。

老後のリスク・・・?
はい。老後に多額の出費が生じたり、収入が大幅に減ったりすると、老後破産してしまう恐れがあります。次の章で、老後に考えられる主なリスクについて説明しますね。

夫婦で確認すべき、老後破産につながる5つのケース

ここまで平成29年度のデータをもとに、高齢者の貯蓄額の目安を見てきました。

貯蓄額の中央値が「1639万円」と聞いたとき、けっこう多いと思いました。
しかし今の高齢者と同額の貯蓄があっても、あなたが老後を迎えるときには足りなくなっている可能性もあるんですよ。
えっ、どうしてですか?
理由は主に次の5つです。各項目について、詳しく説明しますね。

1:今後は公的年金の支給額が減る恐れもある
2:平均寿命が延び、より多くの老後資金が必要になる
3:高額な医療費を支払う可能性がある
4:高額な介護費用を支払う可能性がある
5:熟年離婚すると収入が少なくなる

【1】年金だけに頼るのはNG!今後は支給額が減る恐れも

公的年金(国民年金・厚生年金)の支給額は今後減る可能性もあるため、より多くの老後資金を用意しておく必要があります。

年金が減る可能性があるのは、なぜですか?
国(政府)が実施する公的年金制度は、少子高齢化に対応するため内容の見直し・改定が行われています。支給額も変化しているので、年金の支給額が減る可能性も十分考えられるのです。

公的年金の支給額は、制度の内容変更により減る可能性もある

厚生労働省の調査によると、国民年金(老齢基礎年金)の場合、受給者1人あたりの給付額は次のとおりです。

国民年金の支給額の推移(満額の場合)
支給額
平成20年度 66,008円
平成21年度 66,008円
平成22年度 66,008円
平成23年度 65,741円
平成24年度 65,541円
平成25年(4月~9月) 65,541円
平成25年10月~平成26年3月 64,875円
平成26年度 64,400円
平成27年度 65,008円
平成28年度 65,008円

国民年金支給額の推移グラフ

厚生年金の支給額は、保険料の納付月数だけでなく、年収も加味して計算されます。ここでは標準的な年金受給者世帯の場合を例に、支給額の推移を見てみましょう。

厚生年金の支給額の推移(標準的な年金受給者世帯の場合)
支給額
平成20年度 232,591円
平成21年度 232,591円
平成22年度 232,591円
平成23年度 231,648円
平成24年度 230,940円
平成25年(4月~9月) 230,940円
平成25年10月~平成26年3月 228,591円
平成26年度 226,925円
平成27年度 221,507円
平成28年度 221,504円

厚生年金支給額の推移グラフ

国民年金は、9年間のあいだに増えたり減ったりしてるわ・・・。厚生年金の受給額は、平均額がだんだん下がっていますね。
モモリーさんは20代。老後までまだ40年以上ありますから、今後の変動を予測するのは難しいでしょう。

でも万が一の場合に備えておけば、不安なく老後を過ごせます。

加入している年金や受給額は、夫婦によりさまざま。国民年金・厚生年金の支給額については、詳しい仕組みを次の記事で解説しています。

国民年金 【図解付き】国民年金の受給額の計算方法と、増額・減額の仕組み」
厚生年金 【平成30年度版】厚生年金の支給額の計算方法・平均額

【2】『長生きリスク』による老後破産の対策が必要!

今後は「長生きリスク」による老後破産を防ぐため、対策がより重要になると考えられます。

長生きリスクによる老後破産

「長生きリスク」って何ですか?
長生きすることで亡くなる前に貯蓄が底をつき、金銭的に苦しくなるリスクのことです。

現在は「100年生きる時代」とも言われ、昔に比べて平均寿命が長くなっています。そのため老後破産する危険性も高いのです。

長生きリスクが高まる理由・今からできる対策については、別記事「公的年金だけで長生きリスクの対処は無理!オススメの資産運用は?」を参考にしてください。

【3】医療費の備えはしておくべき!貯蓄だけでなく医療保険も検討

高齢になると、傷病を負うリスクも高まります。健康・安心な老後を過ごすためには、十分な医療費を確保しておくことが大切です。

老後にどんな病気・ケガをするかなんて予想できないので、医療費をいくら貯めるべきか分かりません。計画的な貯蓄は難しいんじゃないかしら・・・。
そうですね。それに公的医療保険(社会保険)の制度が変わる可能性もありますから、自己負担額の割合が多くなってしまう恐れもあります。
これじゃ、かなりの貯蓄がないと安心できないわ・・・。
そこで検討してみてほしいのが、民間保険会社の医療保険です。加入することで、医療費や通院費などが保障されますよ。
でも「医療保険には入らないほうがいい」っていう意見もありますよね。
はい。加入したほうが得かどうかは、経済状況や家族構成、健康状態などから判断する必要があります。
たとえば小さい子どもがいる家庭では、世帯主が病気・ケガを負うと収入が大幅に減る可能性も。このような場合は、医療保険に加入しておくと安心です。

しかし「夫婦2人暮らしで共働き」「養育費などの負担がない」といった場合は、貯蓄だけで十分な可能性もあります。

当サイトでは、医療保険の必要性や利用方法などもお伝えしています。詳しくはカテゴリー「医療保険とは?必要性や選び方(終身・掛け捨て)をわかりやすく解説」で確認してみてください。

【4】介護費用はサービス・施設により様々!前もって調べておこう

老後に介護を要する場合、高額な介護費用がかかる恐れもあります。

介護費用ってどれくらいするんでしょうか?
要介護の程度などによって受ける介護サービスの種類はさまざまなので、費用にも幅があります。

たとえば老人ホーム・介護施設の場合は、月額費用が高くて30万円のところもあります。また入居一時金が無料の施設もあれば、数百万円する施設もあるんですよ。

そうなんですね。でも料金の安さだけで選ぶのは、ちょっと不安だわ・・・。
自分が要介護者になった場合、どのような介護を受けたいか、どのような施設に入りたいかなどを考えておきましょう。そうすれば、必要額の目安を決められます。

夫婦2人で入居できる施設もあるので、一緒に見てみるといいですよ。

老人ホームや介護施設の種類・費用などについては、カテゴリー「老人ホームと介護施設の種類を解説!ニーズに合う施設を見つけよう」で紹介しています。

【5】熟年離婚が老後破産につながる恐れも

昔に比べ、熟年離婚の件数は増えています。実は熟年離婚も、老後破産につながる恐れがあるのです。

熟年離婚によって老後資金が足りなくなるのは、離婚後に次のような可能性がある人です。

  • 自分の収入が安定しない
  • 財産分与をすぐ使い切ってしまう恐れがある
  • 収入が減っても価値観が変わらず、浪費してしまう
  • 家賃や光熱費、養育費が自己負担になる
離婚後、夫婦それぞれの貯蓄や収入・支出には個人差があります。

経済的に余裕があれば「熟年離婚することで、充実した老後生活を送れるようになった」という人もいるので、「熟年離婚はやめたほうがいい」とは言い切れません。

老後も夫と仲良く過ごしたいので、いまから熟年離婚なんて考えたくありません・・・。
たしかに、あまり考えたいことではないですね。ですが将来起こり得るリスクについて、少しでも知っておくことは大切ですよ。

貯蓄だけでなく、公的年金以外の収入も増やしておくのがオススメ

老後資金を夫婦2人で貯蓄するには、病気やケガ、年金減額などのリスクに備えることが大切なんですね。

となると、やっぱり年金は「5000万円~1憶円ないと安心できない」ってことなのかしら・・・。

たしかに貯蓄は多いほうが安心です。でも結局いくら必要になるかを、明確にすることは難しいですよね。

そこでオススメなのが老後の収入源を増やす方法です。

限りある貯蓄を頼りに、老後生活を送るのは難しいもの。公的年金も、現役時代に得ていた給料と比べると少額です。

しかし公的年金に収入を上乗せしておけば、老後破産を防げる可能性があります。

収入を得る方法は、大きく分けて勤労所得不労所得の2種類。

老後は体力的・年齢的に働くのが難しくなる恐れもあるので、安定した不労所得を得られると理想的です。

老後は不労所得があると安心

不労所得を得る方法は、主に次の4つです。

不労所得を得る方法
方法 内容
不動産投資 利益取得のためにアパート・マンションなどを購入する
個人向け国債 国にお金を貸す(債権を購入する)ことで、国から定期的に利息を得る
投資信託 専門家(ファンドマネージャー)に投資を任せ、利益を還元してもらう
個人年金 民間保険会社の年金保険に任意加入し、年金を積み立てる
しかし夫婦で老後資金を貯めるなら、どの方法で行うのか十分に話し合う必要があります。

たとえば不動産投資を夫婦2人で行う場合、意見の食い違いが生じる、うまくいかず最悪の場合は離婚するなど、トラブルを引き起こす恐れも。

自分たちに合った方法を見つけましょう。

老後資金の貯め方とは?お金を増やすための9つの運用方法を紹介」では、老後資金の貯め方・老後の収入を得るオススメの方法を紹介しています。賢く運用するコツや注意点もお伝えしているので、ぜひ役立ててください。

夫婦で準備すべき老後資金は『目安の貯蓄額+老後の収入』

この記事では、夫婦2人世帯に必要な老後資金の目安についてお伝えしました。

世帯収入・支出によって必要額は異なります。また次のようなリスクにも備えが必要です。

・年金制度が変わり、受給額が減るリスク
・高額の医療費や介護費用が必要になるリスク
・長生きリスク
・熟年離婚による老後破産のリスク

老後にも収入を得る方法はあります。特に体力的・年齢的に仕事が難しくなったとき、不労所得があると安心です。

夫婦で話し合い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するなどして、老後のために計画していきましょう。

※記載の情報は2018年10月現在のものです。

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