農地などの造成費用はいくら?坪単価の目安や節約方法、注意点を紹介
造成費用は、地域や土地の状態、業者によって異なります。
高額になりやすい造成工事ですが、少しの手間で費用削減も可能。ただし近隣トラブルなどが発生しないよう、地主がきちんと把握しておくべきポイントもあります。
当記事では、初心者の方向けに「造成工事の概要」「造成費用の目安」を簡単にまとめました。また「費用を安く抑える方法」「注意点」も記載していますので、造成を依頼する前に一度確認しましょう。
造成工事とは、土地の用途を変えるための大規模な工事をいいます
造成工事とは、そのままでは別の用途で使えない土地(農地や山林など)の、形や質を変える工事をいいます。
宅地にする場合は宅地造成、工業用にする場合は工業用地造成といわれます。災害時でも安全性が担保できるよう、「宅地造成等規制法」や「都市計画法」にもとづいて申請が必要な場合も。
造成工事は、次のような作業を組み合わせて進めます。
「凹凸がある土地」「土盛りしたあとの土地」を地ならしする作業
伐採・伐根
樹木を伐採し、根などを除去する作業
地盤改良
湿田など軟弱な表土で覆われた土地の地盤を安定させるための作業
土盛
道路よりも低い位置にある土地に、宅地として利用できる高さ(原則は道路面)まで土砂で埋め立て、地上げする作業
土止
土盛りした土砂の流出や崩壊を防ぐために構築する擁壁(ようへき)作業
造成費用の目安は、国税庁が地域別に提示!埋め立て体積も金額に影響
宅地を造成する費用の目安は、国税庁が地域別に出しています。
国税庁のホームページで、確認が可能です。
平坦地の造成費目安(坪単価):同じような土地でも地域で異なる
造成費用は平らな土地でも、地域によって目安金額が変わります。
たとえば北海道、東京都、大阪府、福岡県では、それぞれ次のとおりです(令和元年)。
整地費 | 1㎡あたり600円 |
---|---|
伐採・抜根費 | 1㎡あたり900円 |
地盤改良費 | 1㎡あたり2,100円 |
土盛費 | 1㎥あたり6,200円 |
土止費 | 1㎡あたり69,100円 |
整地費 | 1㎡あたり700円 |
---|---|
伐採・抜根費 | 1㎡あたり1,000円 |
地盤改良費 | 1㎡あたり1,800円 |
土盛費 | 1㎥あたり6,500円 |
土止費 | 1㎡あたり68,600円 |
整地費 | 1㎡あたり600円 |
---|---|
伐採・抜根費 | 1㎡あたり1,000円 |
地盤改良費 | 1㎡あたり1,700円 |
土盛費 | 1㎥あたり6,200円 |
土止費 | 1㎡あたり67,200円 |
整地費 | 1㎡あたり600円 |
---|---|
伐採・抜根費 | 1㎡あたり1,000円 |
地盤改良費 | 1㎡あたり1,800円 |
土盛費 | 1㎥あたり6,200円 |
土止費 | 1㎡あたり52,500円 |
では次の例を用いて、宅地造成費用の目安を計算してみましょう。
・面積225㎡(約68坪)
・1面が道路に面した間口15m、奥行15m
・土盛り1mが必要
・道路面を除いた三面について、土止めが必要
この場合の費用目安は、次のとおり。
土盛費:225㎡✕1m✕6,500円=1,462,500円
土止費:15m✕3辺✕1m✕68,600円=3,087,000円
合計:4,707,000円
坪単価:約69,000円
同じような土地の場合、福岡県の金額で計算すると3,892,500円(坪単価約57,000円)となります。
傾斜地の造成費目安(坪単価):傾度5度の違いで1万円以上の差も
傾斜地の造成費用は、傾度によって1坪あたりにかなり差額が出ます。
たとえば東京都では、傾斜地の金額目安は次のとおり。
傾度 | 金額 |
---|---|
3度超5度以下 | 17,900円/㎡ |
5度超10度以下 | 22,100円/㎡ |
10度超15度以下 | 33,900円/㎡ |
15度超20度以下 | 48,200円/㎡ |
20度超25度以下 | 53,300円/㎡ |
25度超30度以下 | 55,500円/㎡ |
たとえば面積225㎡(約68坪)・傾斜度6度の土地を造成する場合、次のような費用がかかります。
坪単価:約73,000円
そのため実際の造成費用は、工事をする業者が決定。
造成費用の節約方法について、次の章で詳しく紹介します。
造成費用を抑える2つの方法!少しの手間で数百万円の差が出ることも
国税庁が提示する宅地造成費の金額は、農地を評価するときに使うもの。実際の造成費用は、工事を担当する業者が決定します。
そのため、実際には目安金額よりも安くなることが多いです。
費用をできるだけ抑えるには、次のような方法があります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
造成依頼前に自分でできることをしておこう!ただし安全の範囲内で
造成を依頼する前に自分で下処理をしておけば、費用を安くできる可能性があります。
基本的に、造成工事は大規模なため専門業者が行います。しかし、雑草や小さな樹木の除去、粗大ごみの処分などは自分でできることも。
造成業者の複数見積もり依頼で500万円差が出た例も!悪徳には注意
造成費用を抑えるために、複数の業者の見積もりを比較しましょう。作業内容や擁壁に使用する材質など、業者ごとにさまざまな観点から提案をしてくれます。
ただしきちんと現地調査を行っている業者であるか、確認が必要です。
あまりにも安すぎる業者は、現地調査無しの安易な見積もりを提示している恐れがあります。この場合、追加の請求や廃棄物の違法投棄など、トラブルを発生させる可能性があるのです。
また産業廃棄物管理票(マニフェスト)も必ず確認しましょう。
造成工事で出た産業廃棄物の方法を、最終工程まで明記したもの。関係業者(造成業者・運搬業者・処理業者・最終処理業者)で、5年間保管が制定されている。
造成で出た廃棄物を劣悪業者が違法投棄すると、廃棄物の保持者であった地主が罰せられる可能性があります。
造成業者はインターネットでも検索が可能。少し手間ですが、安心して任せられる業者を自分で探しましょう。
造成工事を進めるときに注意したいこと4点!法律や税金も要チェック
地主は造成工事をするか決める前に、次の注意点を把握しておきましょう。
詳しく解説していきます。
1:造成前に2つの法律規制をチェック!許可がなければ造成不可
どんな土地でも造成工事ができるとは、限りません。
次のような法規制がかかっている場合、造成するのに許可を申請する必要があります。
無秩序な市街化による環境悪化と、公共投資の非効率化を抑止するための法律。敷地内に道路をつくるといった「区画の変更」や、土盛や切土といった「形質の変更」をする場合、開発許可を受ける必要がある。
宅地造成等規制法
宅地造成に関する工事について、必要な規制をする法律。主に、土盛や切土の高さに規制基準を設けている。
どちらの法律も、申請は知事(指定都市等では市長)へ届け出ます。
2:農地を造成するには許可が必要!また申請に10万円程かかります
農地を住宅用地など農地以外の土地に変えることを、「農地の転用」といいます。農地の転用には、その土地を管轄する農業委員会へ届出または許可申請が必要。
農地転用の可否は「立地基準」と「一般基準」の2つの基準から判断されます。それぞれの基準で転用が認められるのは、次のとおり。
立地基準 | ・市街化が見込まれる農地(第2種農地) ・市街化が著しい区域の農地(第3種農地) |
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一般基準 | 次の様な、審査項目を満たす農地。 ・転用に必要な資金や信用がある ・転用予定地の権利者の同意がある など |
このように農地の転用には厳しい基準があり、転用できないケースも多いのです。
農地転用に関しては、「農地を転用して売買する方法」でも詳しく紹介。一度確認しておきましょう。
3:造成後に固定資産税が上がる可能性も!造成スケジュールを要確認
次のような造成の場合、固定資産税が上がる可能性があります。
- 農地を宅地にする造成
- 住宅用地の造成
固定資産税は、その土地の評価額をもとに決定します。通常、評価額は宅地の方が農地よりも高額。そのため農地を造成して宅地にすると、固定資産税が上がります。
また住宅が建っている土地の固定資産税には、ほかの土地利用と比べて6分の1~3分の1ほど安くなる特例があります。この特例は、住宅が建っている土地専用。そのため造成すると、固定資産税が上がります。
土地の固定資産税は、毎年1月1日時点での土地の状態によって決まります。そのため、「前年の1月1日」と「翌年の1月1日」どちらも居住用地としていれば、固定資産税は変わらないのです。
農地の固定資産税については、次の記事でも詳しく紹介しています。
そのほかの固定資産税については、次の記事も確認してみてくださいね。
固定資産税の計算は少し複雑なので、詳しくは最寄りの税務署か税理士へ相談しましょう。
4:売却益が出たら、確定申告を忘れずに!造成費用で節税が可能
造成した土地を売って利益が出たら、所得税の確定申告が必要です。
節税のため、造成費用を経費として申告しましょう。
確定申告の際、造成費用は「土地の取得費」に算入します。
取得費が明確でない場合の造成費用は、「譲渡費用」に算入可能。ただしこの場合は、売買契約書に「売買に伴い造成する旨」の明記が要るので注意してください。
不動産売却後の確定申告については、次の記事も参考にしてみてくださいね。
造成費用は高額!安易に進める前に、専門家への相談がオススメです
造成費用の目安は、国税庁のホームページで調べられます。
一般的に造成は大規模な工事が多く、高額です。
また法規制により、思うように進まない可能性が。
農地のまま売却したい場合は、農地バンクの利用も検討してみましょう。「農地バンクとは?メリットやしくみ・利用方法を知って活用しよう」の記事も参考にしてみてくださいね。
農地以外の土地を売却したい場合は、まずは不動産会社に相談を。自分にあった不動産会社を探すには、土地価格の一括査定サイトの利用が便利です。
一括査定サイトの特徴や活用術については、「おすすめな不動産一括査定サイトを厳選して紹介!」をご覧ください。
失敗しないよう、ぜひ専門家に相談しましょう。
農地を宅地造成するケースのほとんどは、開発行為や土地区画整理事業による大規模な宅地開発ですが、生産緑地の指定解除により小規模な宅地造成を行うケースが今後増えるかもしれません。
小規模な場合は土地所有者がご自身で計画を立てることもあると思います。
そのようなときの参考にしてください。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。